行 政 の 対 応


 
ここでは、学校の対応が不十分だと思った私が所在地市長へ宛てたメールを
紹介したいと思います。

息子は小学校始まって以来の子供だと言われ、それまでその学校では息子のような
発達障害児についての対応は全くなく、学校側でも頭を悩ます問題でした。
それでも時間は否応なく経ってしまいます。
 どこに、誰に、相談すればいいのかわからない私は市長に4回に渡りメールを出しました。

以下がその内容です。


≪ 市長への手紙 ≫  〜1回目〜


・自分の住所
・自分の名前・歳・電話番号・携帯番号
・自分のメールアドレス

 初めまして、●●区に住む37歳の女性です。いきなりのお手紙で失礼致します。
ですが、どうしても市長に助けて欲しいと書かずにいられませんでした。

 私は現在小学校6年生になる女の子と、1年生の男の子を育てています。
6年前に離婚し、実家で生活しながら子育てとパートをしております。
 平成14年1月より下の子供が落ち着きがなく、小学校入学後に●●療育センターを卒園した
保育園の紹介により受診した結果ADHDとの診断を受けました。
市長はADHDをご存知でしょうか? 
今はテレビでも取り上げられている発達障害のひとつです。

ADHDと言っても様々な症状がありますが、
下の子供の際立った特徴は集団生活不適応とLD(学習障害)です。
息子は入学式から集団生活に馴染めず、入学式への入場も先生に付き添われてでした。
保育園の園長先生より担任の先生へは必要な配慮等、お話頂いていたようですが、
学校側も初めての多動児受け入れとあって、今日に至るまで思考錯誤の連続でした。

 私は1学期は毎日息子と登校し、先生の来るまでの間を廊下で過ごしました。
離婚後5年間勤めていた職場も退職を余儀なくされ、最優先に子供のこと、
そうして私自身も講演会等に出席して多動児との関わり方を学んで参りました。
息子は私が側にいると落ちつくこともあって、
学校の遠足等に付き添って欲しいと学校から言われ、そのように対処して参りました。

 その後、リタリンというADHDに有効と言われるお薬も試しましたが、
残念ながら息子には効果より、副作用が出てしまい、現在は服用を中止しております。
その後かかりつけの小児科の先生の紹介により■■療育園の方にもかかることになりました。
両病院の検査の結果は知能は普通とのことでした。
ただ、言語性と動作性に開きがある為、現在は■■療育園の言語科に週に1回言語療法に
通っております。
言語科での対応は完全1対1ということもあって、40分は着席して課題にも取り組めております。

 しかし、その間も学校生活では授業をちゃんと受けることなく学校内を歩き回る、
消化器を噴射する、ざりがにの餌をばら撒く、等の問題行動が続いております。
そして、なにより私が心を痛めているのは他の児童に迷惑をかけているという点です。
授業妨害はもとより、言語能力が低いため、ちょっとのことでも言葉で返せず、
ついつい手を出してしまいます。
時にそれは相手方の目の下を棒で刺してしまったり、青痣を作ってしまったりと、
身体的被害にも及ぶものでした。 
もちろん私はその都度相手方にお詫びの電話をしているのですが、
また繰り返してしまう我が子にどうすればいいのかと、
また、ただただ謝ることしかできない自分の不甲斐なさが本当に辛いです。

 そして、学校へお願いして8月に養護教育相談センターを受診しました。
そこでの提案はやはり個別に指導する空間の確保でした。
前に親の会に出席した時、川崎市では親の要請により補助教員が配属されるとのことを聞き、
藁をもすがる思いで校長先生に嘆願しました。
しかし、校長先生が要請しても1回だけ様子を見にきたきりで、
持続することも連絡もないのが実情のようです。
担任の先生は一人で苦労を背負いこむ形となり、色々勉強を重ねてくださいますが、
それでなくても落ち着きのない1年生のクラスを見ながらとても息子にまで接するのは
こちらが見ても限界のように思えました。

 何度となく病院と話し合い、何度となく学校に足を運び、何とか何とかとここまでがんばって
まいりましたが、とうとうここにきて他の父母達から苦情と不安を訴える声が大きくなって
参りました。
私は息子の多動症のことを他の父母には話しておりません。
懇談会や茶話会などに出席し、ただひたすら落ち着きのないことをお詫びして参りました。

 多動のことを話さなかったわけは、親の会等に出席した際に、オープンにしたが故に
障害児扱い、もしくは奇異の目で見られ、ついには学校に行けなくなった話しを聞いたことが
あったからです。
 普通の子供を育てている父母達に多動児についての知識はほとんど皆無に近いと思います。
テレビ等で取り上げられている多動児=問題児 といった認識しかないと思っております。
それは仕方のないことで、私自身が始めの頃は納得がいかず、子供を叩く、なじるの連続でした。
「なぜ・この子はわかってくれない!なぜ!なぜ!」との思いが毎日私を苦しめました。
そうして少しずつ勉強して行って、現在に至っております。

 2学期にあまりに他の子供とのトラブルが多く、
このままではとり返しのつかない傷を負わせてしまうのではと悩んだ末に「特殊学級」に入れて下さいと嘆願したことがあります。「特殊学級」なら一人につく先生の数ははるかに普通級に比べて多くなります。
しかしながら、文部省の指導により多動児は普通級での受け入れということになっているとの
ことで、受け入れてはもらえませんでした。

 先に文部省が「今後の特別支援教育の在り方について(中間まとめ)」を発表しましたが、
内容自体は大変すばらしいのですが、私たち親が願うのは早急の実現の他ありません。
文部省にも嘆願文章を送りましたが残念ながら返事は頂けませんでした。
 現在、息子はこども医療センターの療育科も受診し、
何とかいい方向にと願うばかりの毎日です。

 長々と書いてしまいましたが、市長に是非助けて頂きたいです。
現在私はもちろん周りの父母も毎日を不安の思いで過ごしています。
学校も最善の方法を考えてくださっていますが、現状維持がやっとの毎日です。
私は息子を学校に送り出すのが辛くてたまりません。
周りの父母・先生方にご迷惑とご苦労をおかけしてまで子供を学校に行かせていいのかと
悩むばかりの毎日です。

 多動児は目に見えての障害はありません。
しかしながら、どうしてもできない、また、できるまでに通常の子供達の
10倍20倍の努力が必要な子どもです。
でも、子どもの目は澄んでいます。この目を濁らすことなく私は子供を育てる義務があります。
そうして周りの父母達にも子供を安心して学ばせる権利があります。
 補助教員を!と先生方が声を上げても「予算が…」で終わってしまうのは納得できません。
息子は毎日成長しています。しかしながらその成長には多くの手が必要とされます。

 どうすればいいのでしょうか。
私達はどこに行けばいいのでしょうか。
行くところがあれば、すぐにでも行きます。
やれることがあれば何でもします。
生きて行きたいのです。助けて下さい。

 お時間があれば、是非市長にお会いしたいです。
直接お話したいです。限界のところまで来てしまっている教育現場の現状と、
それに係わる周囲の方の不安を、多動児を抱えて生きている私を見て、話しを聞いて欲しいです。

 ●●市は福祉に長けている市だと思っております。
私も●●市で生まれ、そして毎日を生きています。
母子家庭の身になった今でも福祉に支えられて生きております。
他の市の状況を聞いたときに、いかに自分が恵まれた市にいるのかも痛感し、
感謝もしております。
 だからこそ、教育の現場にも是非再考をお願いしたくここに嘆願致します。
ひとつの小学校の問題ではなく、これから益々増えてくるであろう多動児について、
また、その他の発達障害を持つ、しかしならが普通級で過ごして行くであろう児童に、
安心して通わせる環境と周りの児童達の安全を確保して下さい。

失望ではなく希望を私達にください。
未来を担う子供達に等しく笑顔を与えて下さい。
市長にしかできません。
市長に助けて頂きたいのです。
何卒よろしくお願い申し上げます。

お忙しいところ、最後まで読んで下さり、本当にありがとうございます。
何卒、何卒早急なご回答をお願い申し上げます。

 間もなく行われる懇談会で、父母への説明が求められております。
市長の心強いお言葉を持って臨みたいと切に希望しております。
また、これまでの間を不安で過ごされた父母の方へ少しでも納得と安心をして頂きたいと
心より思っております。
宜しくお願い申し上げます。
                                                平成15年1月28日

市長への手紙2へ続く